*

ホラー小説 めろん。-3

公開日: : めろん。

「確保ォッ!!」

 上居の声が凍りついた一同を我に返した。
 一斉に同席した部下達が男を取り押さえる。
「いてて、なにをするんですかみなさん」
 後ろ手に頭をテーブルに押し付けられながら男は動揺することもなく涼しく言った。
「上居警部! バスルームに首のない遺体が……!」
 先程バスルームで叫んだ部下がこの風景を目の当たりにして言葉を詰まらせた。
「バスルームに”食べ残し”か?」
「は、はい……、こ、これは」
 口元を押さえながら現状が理解できていない部下が上居に聞いた。

 

 

「おかしなことを言いますねえ」
 抑えられつつもニコニコとした笑顔を絶やさず男は普段通りの様子で、絶句する部下に言った。
「そのメロン、あまくておいしいんですよ」
 テーブルに置かれた”ソレ”は、逆さに置かれた女性の頭だった。
 冷蔵庫に入れられていたからか、真っ青な顔色で上を向いた首の断面からは白い骨が5㎝ほど飛び出ている。
 ”コレ”をメロンに例えるには大分無理があるが、【彼ら】にとってはこれこそがメロンなのだ。
「貴方達と同じメロンじゃないですかあ」
「連行しろ」
「はっ……!」
 上居は”メロン”と呼ばれた”ソレ”を見つめながら思った。
(生きている人間も奴らにとっちゃメロンなんだよな。)
 この異常な猟奇事件は今年に入って2件目。
 ここ3年で通しては実に10件目の類似事件になることを上居は胸の内で数えた。

製品版⇒

めろん。

 

 



このエントリーをはてなブックマークに追加

スポンサードリンク



関連記事

no image

ホラー小説 めろん。 -1

上居 雄 かみい ゆう 38歳 刑事 8月25日 20:15 「こういう者ですが」

記事を読む

【連載】めろん。3

めろん。2はこちら ・綾田広志 38歳 刑事③  今回もその時と同じだ。

記事を読む

【連載】めろん。65

めろん。64はこちら ・綾田広志 38歳 刑事㉒  女から教えてもらった家にや

記事を読む

【連載】めろん。69

めろん。68はこちら ・綾田広志 38歳 刑事㉖ 「えー……何日か前に

記事を読む

【連載】めろん。63

めろん。61はこちら ・綾田広志 38歳 刑事⑳  俺は息を潜め物陰か

記事を読む

【連載】めろん。15

めろん。14はこちら ・綾田広志 38歳 刑事⑤  玉井善治は寝室のベッドでひ

記事を読む

【連載】めろん。104

めろん。103はこちら ・破天荒 32歳 フリーライター㉙ 「共食い鬼

記事を読む

【連載】めろん。2

めろん。1はこちら ・綾田広志 38歳 刑事②  一連の事件の異常性は、口に出

記事を読む

【連載】めろん。19

めろん。18はこちら ・破天荒 32歳 フリーライター②  黒電話

記事を読む

【連載】めろん。54

めろん。53はこちら ・綾田広志 38歳 刑事⑮  背筋が粟だ

記事を読む

スポンサードリンク



Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク



【連載】めろん。1

■めろんたべますか ・綾田広志 38歳 刑事①

【夜葬】 病の章 -1-

一九五四年。 この年の出来事といえば、枚挙に暇がない。二重橋で一

怪紀行兵庫・自然に呑まれてゆく産業遺産 竹野鉱山

■わくわく鉱山ツアー どうも最東です。今回も前

怪紀行鳥取・廃墟景観シンポジウム2 天空に眠る若松鉱山

■産業遺産フォー! どうも最東です。ぺろぺろ今

怪紀行青森・東北最恐?それとも最狂?止まらないおもてなし とびない旅館《後編》

~前回までのあらすじ~ 変人がやっている旅館に

怪紀行青森・東北最恐?それとも最狂?止まらないおもてなし とびない旅館《中編》

とびない旅館 前編はこちら ■座敷童がでる宿

怪紀行青森・東北最恐?それとも最狂?止まらないおもてなし とびない旅館《前編》

怪紀行青森・死者と邂逅する場所 恐山 ■飛内さ

→もっと見る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

PAGE TOP ↑